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第二章 第二話*2

last update publish date: 2026-07-08 18:00:29

書斎はエリオットの部屋から数分歩いた場所にあり、入った途端、一面書架しょかが立ち並んでいる。床から天井までびっしりと書物が収められていて、ゼフによれば一応書物の内容別に区分されているという。

 そうして早速、エリオットは書架の中でも魔力や魔物の書物の納められているという場所に向かい、片っ端から読んでみることにしたのだが――

「え、嘘だろ……文字が全然読めない……何だ、この文字……」

 エリオットは母国語の他に近隣諸国の言語も独学で二~三語習得しており、日常会話や簡単な書物を読み下す程度の語学力はあるつもりだった。

 だがいま目の前にしている書物の文字は、いままで習ったどの言語にも属さない、難読中の難読でとっかかりすらつかめない。

「これでは魔王様のことも魔力のことも何一つわからない……」

 もしかして、エリオットが魔物の書物を読める人間なんだろうか? と思ったから、ゼフも先程不思議

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    「エリオット、いまいいか?」 魔王の背に乗ってヴェルクレイン国の様子を見に行った夜遅く、魔王が珍しくエリオットの部屋を訪ねてきた。もうそろそろ明かりを消して休もうとしていたエリオットは、魔王の珍しい来訪に目を丸くする。「ええ、大丈夫ですが……いかがされましたか?」 寝台に腰かけて書斎から持ち出した本を読んでいたエリオットは、それを枕元の台に置き、魔王に向き直る。 魔王もまたエリオットの隣に腰を下ろし、なにやら少し神妙な面持ちをしている。「お前、先程モルと何を話しておったのだ? 企みはないことはわかっておるが、何か良からぬことを吹き込まれてはおらぬか? お前のことだ、何か口の上手いあいつに騙されてはおらぬか?」 先程はモルの手前気丈に振る舞っていたのか、本心を言えば魔王とは言え不安がないわけではないのだろう。 しかしそれを正直に口にできるのであれば、いまこんな神妙な顔をしてエリオットを夜更けに尋ねてくることなどないだろう。出かけた帰りでも夕食時でもなく、いまになってそんなことを尋ねてくる辺り、いかに魔王が先程の件を気にかけて悩んでいたかが窺える。 エリオットとしては、先程のモルとの話は企みがないと答えた時点でまっさらになっているつもりだ。やましいことなどなく、魔王だけを信じているのだから。 とは言え、全く何もないといったところで魔王が信じてくれるとは思えない。そうであれば、いまの時分になって尋ねてくることなどないだろう。 だからエリオットは小さく苦笑し、「騙されてなどおりませんよ」と答える。「ただ少し、魔王様は愛想がないから大変だろうとだけは仰っていました。贈り物もしたことがないのか、って」 先程の会話とは多少違うが、モルから言われたことには間違いがない。愛想がないという話であれば毎度されている話題でもある。 その件に関しては魔王も否定できないのか、渋い顔をして「あ

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    「お気をつけて行ってらっしゃいませ、魔王様、エリオットさま」 ゼフに見送りの言葉にエリオットが微笑み、魔王が素早く姿を変える。 翌日の夕暮れ時、エリオットは竜化した魔王の背に乗りヴェルクレイン国の上空を旋回してくることになった。昼間でなく夕暮れ時になったのは、竜の姿を見てヴェルクレイン国の人々が騒ぎ立てることがないようにするためだ。不安定な情勢の国の上空に竜が現れたとなれば凶兆の前触れか、もしくは吉兆だとか、何にしても過剰に扱われてしまいかねないからというのもある。 支度を整えていざ出発となったその時、「おや、お出かけかな?」と、親しげな様子の声が聞こえる。振り返るとそこにはにこやかに微笑むモルが手を振って立っていた。『見ればわかるであろう。何用だ』 モルの登場に魔王の声が明らかに不機嫌に曇る。竜化した姿で睨み付けられれば怖気づきそうなものだが、そこは魔物同士であることに加えて付き合いが長いからか、意に介している様子はない。「そんな怖い顔をしないでおくれよ、アズ。一体どこに行くんだい?」『どこでだって貴様には関係なかろう』 苛立ちを隠さない魔王の口調を引き金に不穏さが生じやしないかと気を揉んだエリオットは、二人の間に割って入るように声を上げた。「そ、そうだ! モル様もご一緒にいかがですか? 私の母国の様子を見に行こうと思っていたところなんです」「ほう、それは面白そうじゃないか。是非ともご一緒させてもらいたいな」 エリオットの提案にモルが乗り気であることは明らかで、魔王には分が悪く思えたのか、ムスッと仏頂面になってしまう。『勝手にしろ。だがモルは自分で足はどうにかするんだぞ』 魔王が背に載せないと暗に言っても、モルは特に腹を立てることもなく、「承知しているよ」と言うに留める。 そうしてくるりとそ

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  • 偽悪役令息は偏食魔王に溺愛される   第三章 第一話*2

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